福祉を軸にした地域共生。
課題解決のために、業種や分野を超えたパートナーシップを構築

2023.03.27
社会福祉法人おおさわの福祉会

SDGs推進のきっかけを教えてください。

~ZEBの実現で浮いたエネルギー費用を、SDGs推進に充てる~

 

 2016年に改正社会福祉法において社会福祉法人の「地域における公益的な取組」が義務化され、法人の自主性や創意工夫による多様な地域貢献活動が行われるようになりました。私たちは経済産業省のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)実証事業の採択を受け、2018年に同事業モデル施設として地域密着型特別養護老人ホーム「ささづ苑かすが」を開所しました。環境に配慮した省エネ型の介護老人福祉施設には、太陽光発電、センサー付きLED照明、ビルマネジメントシステム、高効率省エネ機器などの設備が導入されています。入居者にとって生活しやすく職員にとって働きやすい平屋建ての高断熱の介護老人福祉施設は全国的にみても先進的で、省エネモデルとして県外からの見学者も多く迎えています。本事業で電力使用量を抑えた費用をもとに、地域へ貢献したいと考えたのが私たちのSDGs推進のきっかけです。職員が富山市SDGs推進コミュニケーターの認定を受けるなど、SDGsを正しく理解して地域課題解決に向けた活動を重ねています。

 

省エネ・再エネ設備の導入を継続していらっしゃいますね。

~環境に優しく、災害に強い介護老人福祉施設~

 

 ZEB実証事業モデル施設としての役割を拡大させていくため、富山県SDGs宣言の目標1は「再生可能なエネルギーを有効活用し、地球環境に優しい施設作りをする」としました。モデル施設としての役割は新規開設で終了ではありません。エネルギー使用量を減らすための取り組みを続けており、2021年度から2022年度にかけても電気使用量を19.2%削減しました。2021年には空調設備を更新し、動力源を灯油から電気に切り替えることで、70.7%の灯油使用量を減らして脱炭素化にも貢献しています。施設の太陽光の発電量がリアルタイムで分かるようになっているので、職員の省エネ意識も高まっています。災害時のエネルギー確保のための太陽光発電及び非常用発電機も新設するなど、災害に強い施設づくりを強化し続けています。

地域共生について考える機会を設けていらっしゃいますね。

~勉強会やイベントを実施し、地域共生の理解を深める~

 

 地域共生社会の実現を目指しており、目標2は「地域の皆様が安心して幸せな生活を住み慣れた地域で営んでいただくために貢献していく」としています。私たちが発起人となり2021年に設立した「住みやすい大沢野・細入地域を考える会」は、地域全体で住民を包括的に支えるため、自治振興会や民生委員、企業、警察などがメンバーになり、高齢者や体の不自由な人が安心して暮らすための勉強会をしています。富山国際大学の相山馨教授を講師に招き、地域共生社会に対する理解も深めました。一方で地域の家庭を訪問してニーズ調査をすると、高齢者や体の不自由な人だけが困りごとを抱えているわけではないことも分かってきました。今は福祉サービスと幅広い年代の人の課題解決を並行して実施することが、地域を持続させる一歩だと実感しています。

 

 

 地域共生に関することでは、富山市神通碧小学校5年生に福祉の授業も行いました。児童が自分たちの地域の課題はどこにあるかを考えたり高齢者の視力や体の動きを疑似体験したりしましたが、私たちが一番大切に考えていたのは、優しい心を育むことです。「ささづ苑・ささづ苑かすが」で入居高齢者とともにeスポーツも体験してもらい、児童からは「お年寄りともっと話したかった。もっと自分のことを知ってほしい」という声が上がりました。また施設を利用して「SDGsフェスタ」を開き、サポカー同乗体験やスマホ教室、地元の食材を使った料理の提供、福祉施設で作ったお菓子の販売などのイベントを通して、地域の人に住み慣れた場所で安心して暮らすとはどういうことなのかも伝えています。

 

 

働き方改革にもつなげてらっしゃいますね。

~SDGsの推進で、プライベートが充実する働き方にシフト~

 

 目標3は「職員が多様性のある働きやすい環境作りを目指す」です。職員の勤務体制は、以前までの二交代制を三交代制にしたことで、疲れが緩和し、ワーク・ライフ・バランスの充実にもつながりました。有給休暇やリフレッシュ休暇の取得率も年々向上しています。2022年度には、県の「働き方改革実践モデル企業」に福祉業界で唯一選ばれました。ユニバーサル雇用も実現しており、ダブルケアラーで働きに出られなかった地域の人を、時短勤務から段階的に正社員に採用し、本人の自立支援に至りました。

今後への意気込みを聞かせてください。

~福祉を軸にした地域共生のモデルづくりを加速~

 

 県内の介護福祉施設におけるSDGsの先駆者としてのイメージが定着してきたことで、働き手が少ないと言われている介護業界にもかかわらず、2021年は8名、2022年は7名を新卒で採用することができました。サステナブル推進へ関心の高い人材の増加により、SDGsイベントの企画や運営は、若手職員に任せているものも多く、一人ひとりの職員がやりがいを感じながら働いています。地域の組織や企業とのつながりも拡大しているので、今後は多彩な分野の方々とスキームを構築し、空き家対策や身元保証などの課題解決ができるように取り組んでいきます。地域のパートナーシップを強化して「富山モデル」として発信できるように力を尽くします。

社会福祉法人おおさわの福祉会
担当者
おおさわの介護老人保健施設かがやき
吉野 英樹
事業所住所
富山県富山市下タ林141
地域
富山市
業種
医療・福祉
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