社会問題と向き合い、
樹脂製造メーカーの立場から環境保全を推進

2025.03.28
戸出化成株式会社

素材選びからリサイクルまで、地球環境を考えた企業活動をされていますね

〜環境負荷軽減のために、徹底的なリサイクルを推進〜

 

 高岡市ICパークに本社を構える「戸出化成株式会社」は、プラスチック製品の製造メーカーとして、高品質な金型と射出成形品を製造しています。長年にわたり高岡市内のアルミ建材会社の依頼を受けてモジュール部品を製造してきましたが、近年は樹脂成形品の取り引きを自動車や産業機械、医療など幅広い分野に拡大しています。2020年9月に高岡市ICパークに新社屋を建設して県内に3カ所あった拠点を集約。金型設計と製作、射出成形を一拠点で行えるようになりました。本社屋建設に合わせて屋根に太陽光パネルを設置し、発電したエネルギーを自社消費しています。

 当社は1967年に会長の母が創業し、2025年で49期を迎えます。創業者は子育てがひと段落した後、農協の婦人部のメンバーとともに起業しました。農家の女性たちが安定した収入を得ることや活躍できることを目的に、当初は納屋を利用した工場で、アルミ製品のプレスや研磨などを行っていました。しかし高度経済成長期に差し掛かるころに労働災害が発生。危険が少なくて肉体的な過重の少ないプラスチック製造へ事業転換を遂げました。そのため当社には創業時から、女性活躍やダイバーシティを重視する土壌があります。企業内の女性比率も約半数を維持し続けており、新卒者も男女をほぼ同比率で採用してきました。SDGsの推進はこのような企業風土の中での流れでした。

 海洋ゴミやマイクロプラスチックが大きな社会問題となっており、樹脂製造企業はとても厳しい視線を向けられています。しかし当社はリサイクルして繰り返し使える熱可塑性樹脂を主に使用しています。環境負荷を抑える素材を使っているという事業内容や、毎日決まった時間にリサイクルのための徹底した分別作業を行っていることを地域の方々に知っていただく必要もあります。そのため、持続可能な社会の実現に貢献していく意思表明として「富山県SDGs宣言」を行いました。

 

豊富なノウハウと技術力を活かして、事業領域を拡大されていますね

〜100%リサイクル素材を活かして、自社製品を開発・製造〜

 

 富山県SDGs宣言の目標1は「製造・開発活動を通して、お客様満足を向上するとともに、人々の豊かで快適な暮らしの実現に貢献します」です。2023年にはISO9001、ISO14001を更新し、同年にIATF16949認証も取得しました。IATF16149は自動車産業に特化した品質マネジメントシステムの国際規格で、外観検査のプロフェッショナルが在籍している当社の強みを活かし、輸出向け自動車産業への参入を決意すると同時に取得に動き出しました。少量多品種の製造に長年取り組んできた技術の高さや経験が、今後は幅広い分野の業界で活かせると考えています。またOEM事業を主にしていますが、当社から出るロス材を何とか利活用できないかという想いから、数年前より、北陸電力の火力発電所で発生するフライアッシュ(石炭灰) と当社から出たロス材を混練させたコンパウンド樹脂で新たな素材を開発。100%リサイクルの高性能プラスチック敷板「エフエーボード・ECO」の製造・販売もしています。比重1.22の敷板で、建設現場の養生やぬかるみ対策に活用されています。重さ40kgですが、高比重敷板なので水に浮かず、水害時の二次災害も防げ現場復旧にも役立ちます。SDGsの複数のゴールの達成につながる製品であり、鉄板に替わる素材として、販売先は県内だけでなく全国にも広がっています。

 

エフエーボード・ECO

〜SDGsをきっかけに、DXや働き方改革も推進されていますね

〜DX推進で、高付加価値な業務に集中できる環境づくり〜

 

 富山県SDGs宣言の目標2は「自社製造工程を含めたサプライチェーン全体で地球環境負荷の低減に取り組みます」です。県のDX補助金を活用し社内の電子化を進めてタブレットやモニターを導入したことで、コピー用紙の使用枚数が1カ月平均38,000枚から23,000枚に削減できました。工場の製造記録、社内の改善提案などもクラウド上で行っています。また取引先企業様にも協力していただき、納品検査票を電子データ化してQRコードから読み込める仕組みを作りました。社内にDX化推進委員会を設置しており、今後もDX化を推進して生産性向上や環境負荷軽減につなげていく考えです。会社周辺の美化活動は20年以上にわたり続けており、社内の清掃は全社員で毎日15分間行うとともに、会社周辺のごみ拾いや除草などを月一回実施しています。またICパークに事業所を置く企業と連携した清掃活動も行っています。

 富山県SDGs宣言の目標3は「全従業員が年齢・性別の隔てなく、健康で安全で明るく、生き生きと仕事に打ち込める環境作りに取り組みます」です。まずは時間外労働時間の短縮のために、一般社員と管理職がどれだけ残業しているかの現状を把握し、残業が1カ月45時間を超える従業員に対しては、部署の人員配置の見直しや仕事量の適正化を行い、負担が偏らないように改善を行いました。RPAの活用も進んでおり、SDGs宣言後は年間40%の残業時間の削減が実現しています。障害者短時間労働も法定人数の2名を常にクリアしてきました。今後は、付加価値の低い業務のシステム化をさらに推進し、従業員が高付加価値の仕事に集中することで、業務負担軽減と労働時間の適正化を加速させます。

 SDGsという言葉を初めて聞いたときは、中小企業とは縁のないことだと思っていました。しかし経営の一要素として考えると、日々の業務に密接に関わっていることが多く、今は企業経営を考える一つの物差しがSDGsなのだと感じています。「富山県SDGs宣言」をしたと同時に、本社にも推進内容を掲示しました。お客様や金融機関に当社の取り組みを周知することが、会社の信頼にもつながっています。

 

戸出化成株式会社
担当者
総務課
高畑久美子
事業所住所
富山県高岡市ICパーク12番地
地域
高岡市
業種
製造業
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