SDGs推進のきっかけを教えてください。
~サステナブル推進で、地域の中での役割が拡大~
富山で暮らしていると、仕事や買い物、病院への通院やレジャーなど、あらゆる場面でクルマが必要です。一人ひとりの持続可能な生活が、クルマがあることで成り立ち、守られているのです。当社はトヨタ自動車の正規ディーラーとして、富山のモータリゼーションの発展を支えてきました。60年以上にわたって地域社会に向けた幅広い活動を続けており、SDGs推進は企業活動を17の目標に当てはめることからスタートしました。以前は、ほとんどの従業員が自分の所属する部門の動きしか認識していませんでしたが、サステナブルな活動を整理して伝えたことで、従業員自身が職場や仕事に誇りを持つことにつながったと感じています。富山県SDGs宣言をしたのは、SDGsに取り組んでいる企業であることをステークホルダーに発信し、より信頼を高めたいという気持ちからでした。サステナビリティ推進のための協働を持ちかけられる機会も増え、当社が地域の中で求められる役割が拡大していると感じています。
地域の安心・安全を最優先に考えていらっしゃいますね。
~自動車販売を通し、事故防止、環境保全に貢献~
SDGsの推進は17の目標すべてを網羅するのではなく、自動車販売店だからできることを主軸に考えています。特に大切にしているのは、富山県SDGs宣言の目標1にも掲げている「地域の安心、安全を目指す」です。メディアでも頻繁に報じられているとおり、アクセルとブレーキの踏み間違い事故は後を絶ちません。そこでサポカー(安全運転サポート車)を地域の方々に体験してもらっています。自動車学校や警察署にも出向き、高齢者を対象にした安全運転教室に協力することもあります。県内には免許を返納したくてもできない人が多くいます。だからこそ買い替えのときの選択肢にしてもらうことで、家族にも地域にも安心を与えられます。
10年ほど前からはハイブリッド車の普及が拡大し、現在は当社で販売する6割に及びます。排ガス低減や燃費の抑制は環境保全に役立ちますし、運転の診断機能も付いているので、運転する方の環境意識を高めることにもなります。電力供給においては、半数の店舗に太陽光発電の設備があり、店舗の電力に活用しています。また、全店が「子ども110番の家」になっており、子どもたちの安全も守っています。
職場環境の改善にも取り組んでいらっしゃいますね。
~従業員の働きやすさを、生産性アップにつなげる~
目標2は「従業員、安全衛生の向上」で、特にメンタルヘルスケアを充実させています。コロナ禍に入社した従業員は、同僚と仲を深める機会が少なく、悩みを打ち明けにくい状況にあり、ストレスによる心身の健康を損なうリスクを抑える必要がありました。そこで、健康保険組合から講師を招き、新入社員はストレスへの対処法を話していただく機会を設けています。一方、管理職に対してはハラスメント防止とアンガーマネジメントの研修を実施し、パワハラにならない接し方を伝えています。ハラスメントに対しては厳しい罰則を設け、全社を挙げた撲滅の取り組みをしています。エンジニアの現場では有機溶剤の使用を止め、水性塗料を使うようになりました。従業員にとって働きやすい職場を作ることによって、モチベーションや生産性のアップが目指せます。
近年は、クルマ販売以外の役割でも地域に貢献していらっしゃいますね。
~SDGsを積極的に推進するディーラーとしての認知度が向上~
目標3は「学生、地域住民に対して企業の役割を知ってもらうこと」です。インターンシップを通して、仕事の内容や職場の雰囲気を伝えることで、求職率の向上、就職後の離職率低下を図っています。「13歳の自分探し」「14歳の挑戦」への協力により、自動車業界を目指す人材の創出にもつなげています。
SDGs推進を理由に、学生からの関心が高まっています。一番のきっかけとなったのは、富山国際大学、デンソーソリューション北陸(富山市) との「産学コラボプロジェクト」で、地域資源を生かして顧客向けのノベルティグッズの企画・開発に取り組んでいることです。既に3年にわたり実施しており、2022年度は廃棄予定のガラスとひみ里山杉の端材を使って、新車購入者にプレゼントするフォトフレームを完成させました。メディアやイベントを通して当社の活動が地域に報じられたことで、SDGsを積極的に推進するディーラーという認知をされるようにもなり、協働へのお声がけもいただいています。
カーボンニュートラルに向けては、社用車のEV化を進め、水素自動車も導入しています。脱炭素化の加速で、水素車は環境保全の象徴的な役割も担っています。一般社団法人富山水素エネルギー促進協議会の活動で、プロサッカーチーム「カターレ富山」のホームゲームの会場キッチンカー等に、水素で発電した電力の供給もしています。また富山県のトヨタディーラー3社で、富山市と包括連携協定を締結しており、災害時に水素自動車を燃料供給に役立てていただきます。
今後への意気込みを聞かせてください。
~地域の人の生活を守ることが、自動車販売店の役割~
近年は社内ポータルサイトの運用が活発になり、正確な情報共有やペーパーレスにもつながっています。ウェブ会議やポータルサイトの運用が身についたことで、ペーパーレスやDX推進への道筋もできました。
富山でクルマは生活必需品であり、故障があれば普段通りの暮らしができません。当社はディーラーとしての社会的責任を果たすために、緊急事態宣言下でも店舗を開き、地域の方々のニーズに応えてきました。しかしクルマがなくても、安心して移動ができる社会にすることも私たちの役割です。富山県の「とやまノーマイカーウィーク」への参加により、環境へ配慮の姿勢を示しています。スマートフォンアプリ「my route(マイルート)」の活用促進による、地域の人の移動の利便性の向上も図っていきます。
竹田 有明