SDGs推進のきっかけを教えてください。
〜海外への販路拡大も視野に入れ、SDGsと親和性の高い事業を展開〜
滑川市に本社を置く「エムダイヤ」は、廃棄物を再資源化するリサイクル機械の製造・販売を軸に、環境分野の産業機械や工作機械の販売・修理・改造・点検等を事業の柱にしている総合環境企業です。『「もったいない!」をカタチにⓇ』をコンセプトに掲げ、リサイクルを通して次世代を担う子どもたちに、よりよい地球環境を残したいという強い信念を持ち続けています。SDGsの必要性が世の中で叫ばれるなか、私たちの事業は、結果的にSDGsのターゲットやゴールとつながっているという考えを持っています。自社のホームページや富山県SDGs宣言サイトで紹介している取組内容は、SDGsを推進するために発案したアクションではなく、どれも既存の事業内容ばかり。循環型社会の構築、地球環境の保全を目指し、独自の技術を活かした「分離・破砕機 エコセパレⓇ」「切断機 エコカッター、エコループカッターⓇ」「基板剥離機 エココレクターⓇ」など、資源循環が実現するマテリアルリサイクル型 処理機械の製造・販売を加速させており、海外での販路も拡大しようとしているところです。
マテリアルリサイクル型の機械を、豊富に製造しておられますね。
〜切断機、分離・破砕機の製造・開発が、サステナブルな社会の実現につながる〜
富山県SDGs宣言の目標1は「未来の人々が過ごしやすい地球環境を残す」です。資源循環やアップサイクル型の処理装置を開発・販売することを、サステナブルな社会の実現につなげようという取組みです。2024年度に開発したのは、切断幅を既存の900mmから1500mmに改造した切断装置「エコカッター1500」。幅を広げたことで、太陽光パネル装置の破砕処理をスムーズにできるようになりました。近年、再生可能エネルギーに対する意識の高まりから、太陽光パネルの普及が拡大しています。これに伴って、今後は大量の廃棄が予想されており「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」の試算によれば、廃棄パネルの排出量は2036年に年間17〜28万トンに上るとされています。リサイクル業者に幅の広い破砕切断機を導入してもらうことで、処理前の作業の手間の省力化ができるのです。実は改造前の切断装置は、十数年前に取引先に納入したものが有休機となっていたため、買い戻しを行い、使用できる部品は修繕してリユースすることで完成させた、アップサイクル設備です。ほかにも、基板からチップだけを剥ぎ取る基板剥離機、高圧鉄塔電線や光ケーブルを金属芯と樹脂に分離させる分離・破砕機のプラントなど、マテリアルリサイクル型処理機を数多く手がけています。
「ものづくり」と「IoT」を融合させたビジネスを展開しておられますね。
〜自社の技術でしか成し得ないリサイクル業を実現〜
目標2に「既存機械の改良を行い、リサイクル率100%を目指す」とある通り、今後はリユース部品を使った機械の販売にも力を入れます。IoTモジュールを活用した機械の遠隔監視により取引先にメンテナンスや部品交換のタイミングを伝え、機械の長寿命化や取引先との接点の強化にもつなげます。またプラントや機械を稼働するときの二酸化炭素排出量の大幅削減も実現しており、稼働エネルギーを抑えた設計で取引先の二酸化炭素排出量の削減にも貢献します。
機械やプラントの製造や販売によって社会課題の解決を実現できるのは、先代の社長から受け継いでいる「ものづくり」の技術が生かされているからです。当社では、鋼材の納入から組み立て、塗装、納入までを一貫して行う生産体制を取り続けながら、長年にわたり技術を磨いてきました。大手企業と直接取引ができるのも、要望に100%応えられるセミオーダー機械の生産技術があるからこそ。今年度もアメリカや中国の国際特許を取得したほか、過去にはJICAの案件化調査に採択されリサイクル設備の市場調査による現地のニーズの確認も行なっており、自社製の機械を世界の廃棄物処理問題の解決につなげようと考えています。
女性も活躍しておられますね。
〜社員の生活と安全を最優先に考える〜
目標3は「社員の働きがいのある環境づくりに努める」です。近年は自然災害が多発しているので、社員の生活と安全を最優先に考え、自社で事業継続計画(BCP)の策定を行ない、被災時の対応を見直しました。保険、備蓄品の拡充なども行っています。またコンセプトを実行する一貫として、地元の小学生に自社製品の紹介を行い、環境やリサイクルに対する意識を高めるきっかけづくりもしています。このような取組みを実施することで、社員が自分たちの会社を誇りに思うきっかけづくりにつなげています。また研修の拡充、年間休日を段階的に120日まで増やすなどの取組みも推進中です。本社や生産拠点では、女性も活躍しており「とやま女性活躍企業」の認定も受けたほか、今年度は新たに「富山県中小企業経営モデル企業」の指定を受けました。
SDGsを推進していることで、企業活動に興味を持つ若い世代が増え、採用活動においても効果が出ています。また県内のリサイクル業者と連携しながら開発を進めている機械もあります。富山県の「とやまアルミコンソーシアム」に対しても、業界の力の底上げに貢献するため、機械や技術で連携ができればと考えています。
道林 桃香