SDGs推進のきっかけを教えてください。
~サスティナブル経営で、企業価値をさらに向上~
黒部川流域の自然を守り、災害に強いインフラを構築し、地域の人たちの生活を守ることが私たちの使命です。 SDGsの理念を深く知ると、環境への配慮、安心で安全な労働環境づくり、ICTによる技術革新など、弊社の経営方針と重なる部分が多くありました。そこで2018年に幹部研修を行ったうえで、全従業員に対してSDGs研修を実施してグローバルな潮流を全員が理解することから始めました。サスティナブルな経営への足掛かりにしようと、従業員に対して会社や自分の将来像についてのアンケートを取ると「成長したい」「いい会社、いい仕事をしているねと言われたい」という意見が挙がってきました。幹部が中心となり経営方針の強化を進め、中小建設業として全国トップレベルの安全衛生管理やDXを加速しています。またSDGs推進チーム「KUKULU」が主体となって、古くなった作業服を回収して「古着でワクチン活動」への寄附や資源の分別にも取り組んでいます。「大高建設」は SDGsを経営の羅針盤に組み込み、企業は人なりという精神によって企業価値を向上させています。
現場では安全衛生管理を徹底し、ICTも活用されていますね。
~安全を最優先し、ICTやAIの実用化に迅速に取り組む~
メインフィールドにしている黒部川流域は、日本一深いV字峡谷が続き、奥山での土木工事は危険箇所が多く、環境面も、仕事の内容も大きな危険を伴います。私たちは長年にわたり安全衛生管理を徹底しており、富山県SDGs宣言の目標1も「全てにおいて安全を最優先し、無災害・無事故(休業災害ゼロ、公衆災害ゼロ、熱中症ゼロ)を目指す」としました。当社では3人の看護師(正社員2人、季節雇用1人)を雇用しており、山中での事業は現場に看護師が帯同してメンタルヘルスケアをしながら、作業員が心身ともに健康に働けるようサポートしています。「新ヒヤリハット報告」や第三者の安全パトロールも行い、あらゆる面で安全を最優先しています。
現場の作業軽減や業務効率化は、喫緊に対応すべき課題です。そのためICTやAIの実用化に迅速に取り組んでいます。近年、ICT測量機器の導入でワンマン測量が可能になり、補助作業員と高所作業者が削減され、効率化と安全性の向上が図られています。さらに遠隔臨場システムも本格導入して、将来的に現場無人化を目指しています。
厚生労働省の指針に基づき、建設業労働災害防止協会が「建設業労働安全衛生マネジメントシステムガイドライン」(コスモスガイドライン) を制定していますが、弊社は2019年に全国で初めて中小規模建設事業場向け「コンパクトコスモス」の認定を受けました。中小建設業のトップランナーとして業界へ安全衛生管理活動を横展開してほしいという思いを受けての第一号交付ですので、重責を果たす所存です。無災害・無事故対策には終わりがなく、レベルアップし続けねばなりません。ミャンマーにある現地法人も同様の考え方で事業を実施しており、安全意識が未成熟の国でインフラ整備を行いながら、無災害・無事故に対する意識を根付かせようと奮闘しています。
自然環境への配慮、従業員の働き方改革にも積極的ですね。
~豊かな自然環境も、従業員の働きがいも守る~
目標2は「廃棄物の削減に努め、環境に配慮した施工技術の推進」です。工事現場は国立公園内にも及び、アクセスが困難な場所ばかりです。資材や機材を分解し、運搬にトロッコやヘリコプターを利用して運び入れ、現地で組み立てるなど、工事の前段階から弊社が歴史の中で築いた技術力を活用しています。環境保全にも心を砕き、生態系に影響を及ぼす外来生物を持ち込まないために、車両や重機の洗浄も重要視しています。 EVトラックやハイブリッド重機を導入し、化石燃料の使用を抑えた工事を行うなど、脱炭素化も進めてきました。また、環境負荷が少ない工法も取り入れています。
目標3は「新3K・新3Sを中心とする働き方改革で、誰でも平等に働け、安全・安心・快適な職場づくりとダイバーシティーの推進」です。新3Kとは、「給料、休日、希望のもてる」を意味する建設業のイメージアップのための言葉です。そこに自社で考案した新3Sのsmart、sustainable、safetyを加えて「大高建設」の働き方改革への指針にしています。ダイバーシティ&インクルージョン、ユニバーサル雇用、健康経営の実施、ハラスメントの撲滅など、すべてを積み上げながら、従業員の定着や誇りを持って働くことへの意識の向上につなげていきます。
今後の意気込みを聞かせてください。
~SDGsを経営の羅針盤、従業員の共通言語にする~
2019年にSDGs宣言をした当時は、SDGsを推進している中小建設業は全国的にもわずかでした。取り組みを広く発信できたことで、環境へ高い意識を持つ企業から施工指名を受けたこともあります。これまでは遠隔地での仕事が弱みでしたが、ICT化による作業負担軽減や、VRを活用した現場確認などが出来るようになり、DX推進で大きな効果も出ています。 SDGsを経営の羅針盤、従業員の共通言語にし、一人ひとりがワークライフバランスを実現できる会社を互いにつくりたいと考えています。
田 惠芬