SDGs推進のきっかけを教えてください。
~“地球再生"を軸に「すべての捨てるを過去にする」を合言葉にSDGsを推進~
小矢部市にある「ミヤモリ」は、スポーツウェアやカジュアルウェアの企画や製造を行なっています。年間60万着もの洋服を生産しており、2019年からは学校体操服の縫製と販売もスタートしました。SDGs推進のきっかけは、体操服を通しての子どもたちの未来について考えるようになったことと、2021年4月に開始したリペアアップサイクル事業です。「すべての捨てるを過去にする」を合言葉に、全社員が一丸となってサステナブル企業を目指しています。
衣類は、世界で2番目に環境を汚染する産業と言われてきました。それだけにチャレンジするべきで、やりがいがあるという気持ちが強いです。「ミヤモリ」では、繊維縫製業という業種ならではの課題解決を行いながら、新たな事業や異業種とのコラボ商品を生み出しています。
次々と新規事業を立ち上げておられますね。
~リペアアップサイクルによって洋服を循環させる~
富山県SDGs宣言の目標1は「気候変動問題の解決可能な循環型ビジネスモデルの構築の為、カーボンオフセットの行動から取り組んでいます」です。カーボンオフセットとは、避けることのできない二酸化炭素等の温室効果ガスの排出について、排出量削減のための努力を行い、どうしても排出される分については削減活動に投資することで埋め合わせをする方法です。当社では新規事業グループが中心となってSDGsを推進しており、成功体験を繰り返しながら取り組みを継続・発展させてきました。
リペアアップサイクル事業は、2021年に取り引きのあるブランドからの依頼で開始した修理プロジェクトが始まりです。具体的にはパッチやシームテープを使った接着、ファスナー交換、当て布を使った縫製などを行い、リペア・リメイクによって服を生まれ変わらせます。生まれ変わった洋服は、再びお客様に戻されたり、販売され消費者の手に届けられます。ウェアのロングライフを目的にした部門は、当初は2人でスタートしましたが、今は12人で作業するまでに拡大しています、また同じように、学校体操服の回収も行っています。
ほんの数年前までOEM生産が事業の100%でしたが、地域資源と当社の技術を融合させたオリジナルブランド「Nercocia」を立ち上げました。小矢部地区特産のハトムギの糠を活用した、ルームウェアとスキンケアのブランドです。これまで廃棄されていたハトムギの糠からオイルを抽出する技術を小矢部のJAいなばさんが開発され、それを製品に使用させて頂いております。ハトムギを活用した繊維製品で地域活性化を推進している「おやべ繊維ブランド化推進協議会」への参加が、誕生のきっかけとなりました。
スキンケア製品は、県内の化粧品事業者との連携によって生まれたものです。小矢部市は人口の2割以上が繊維業に就いています。地域が持続的に発展していくためにも、地元の魅力を生かした製品づくりが必要だと考えています。
ほかにも工場内の照明をLEDに替えたり、太陽光パネルを設置したり、新規事業グループではさまざまな取り組みを続けています。
廃棄処分していた断裁屑で「服の鉛筆」を作られていますね。
~裁断屑が鉛筆に生まれ変わることを、子どもたちに授業で伝える~
目標2は「“すべての捨てるを過去にする”をスローガンに、地球の未来そのものである子供たちと学び、素晴らしい地球を残します」です。その中で生まれたのが「服の鉛筆」を作る事業でした。衣類を作るとき生地の約20%は裁断屑になります。「ミヤモリ」でも製造工場で毎年20tもの裁断屑が発生しています。これまで工場廃棄物として焼却や埋め立てによって処分してきましたが、資源の有効活用ができないかと考えるようになりました。最初は粉砕してクッションに詰めたりもしましたが、富山県繊維協会の理事や市内の企業などに相談し、炭化させて鉛筆の芯にするアイデアが浮上したのです。学校体操服などの断裁生地を市内の炭化装置開発企業で炭化させ、日本に唯一の鉛筆芯製造の会社に持ち込みました。そうやって2年半かけてできたのが「服の鉛筆」です。鉛筆の芯の20%が廃棄されるはずだった体操服などの断裁屑からできる炭です。最初に4Bを作ったのですが、小学校では1〜2年生に2Bの鉛筆の使用を推奨していることから、2Bも製造しています。小さな子たちのように握力や筆圧が弱くても、芯が柔らかければ濃い文字が書けるのです。「服の鉛筆」は、昨年日本文具大賞のサステナブル部門で、優秀賞を受賞しました。文具メーカー以外での受賞は非常に珍しいことだそうです。
「服の鉛筆」へのアップサイクルが成功したことで、小学校への出前授業の依頼が増え、SDGsの目標12の「つくる責任、つかう責任」についてや地球温暖化対策を子どもたちへ伝える機会も生まれています。また企業のノベルティや株主優待の品として使いたいという依頼もあり、今後もアップサイクルの鉛筆を作り続ける考えです。
今後への意気込みを聞かせてください。
~パートナーシップを拡大させ、新しい事業につなげたい~
労働集約型の企業として、中国やベトナム、インドネシアからの外国人実習生の受け入れも長年行っています。実習生たちが日本でキャリアを磨き、スキルアップのために転職もできるような活動も行っています。このようなSDGsの取り組みは採用でも効果を発揮しています。学生向けに SDGs の授業を行うことで、高校生や専門学校生らが事業に興味を持ってくれるのです。
SDGsは企業が必ず通らなければならない道です。富山県SDGs宣言によって、我々の活動に興味を持つ企業が増え、パートナーシップによって新しい事業や活動が生まれることを期待しています。
宮森穂