SDGs推進のきっかけを教えてください。
~持続可能な企業に向けた働きやすい職場づくり~
当社の事業は産業廃棄物や一般廃棄物の収集運搬・中間処理や鉄スクラップの破砕・選別などもあり、いわゆる3Kと呼ばれる業界です。10年以上前までは残業や休日出勤も多く、有給休暇を取得できないのも当たり前の状況で、離職者もたくさんおり、人口減少が見込まれるなかで働き手を確保することが喫緊の課題でした。そこで従業員の超過勤務削減を目的に、短期間に20人ほどの増員を図りました。振り返るとSDGsが採択される以前から、当社は持続可能な企業であるための策を考えていたのです。今も会社の継続にとって一番大切なのは、社員であり、働きやすい職場づくりだと思っています。
資源の循環や資源利用率の向上を目的としたシステムを生み出している当社にとって、SDGsは事業機会でもあります。社会課題の解決をビジネス機会ととらえ、拡大、進化させることが、会社の維持発展につながります。従業員にはSDGsの根本的な理解を促しており、SDGsウォッシュではない、真の持続可能な社会の実現に向けた取り組みへの意識を持つように伝えています。
DXの取組みを加速していらっしゃいますね。
~DXで雇用環境の整備を推進~
SDGsの達成には、DXが不可欠です。当社は2019年から社内DXを推進しており、2020年に10万枚のペーパーレスを達成しました。2021年にはタブレットを全従業員に配布し、Googleのチャット機能を業務連絡ツールとして使用しています。これは、社員全員が自由に書き込む事ができ、張田真社長からの書き込みも頻繁にあります。そのため社長の想いや行動が全従業員に共有されています。
富山県SDGs宣言の目標1は「社員が能力を最大限発揮し、仕事と生活の調和を図り働きやすい雇用環境を整備する」としています。業務負担と時間外労働削減を目的に、さらに総員数を3%程度増加させる計画です。目標達成にはDX強化が最重要で、当社では月1回のDX会議で業務改革の情報と進捗を共有し、業務の効率化に向けて取り組んでいるところです。
また、働きやすい環境づくりとして、営業グループは、ノー残業デイを設けてプライベートの充実と業務の効率化を図っています。男性育児休業についても積極的に取れる様、育児参加を後押しするリーフレットも作成しました。おかげさまでこれまでに10人取得しております。働きやすい雇用環境の整備には、終わりがありません。
次世代の人材を育てることを重視していらっしゃいますね。
~将来、社会の中核を担う若者を育てる~
目標2は「次世代を担う若者の育成支援を行う」です。自社利益のみに捉われることなく、小・中・高校、大学での講義や出前授業の依頼も受けています。環境やリサイクルのほかにも、近年はSDGsやESGをテーマにした依頼が増えました。かつて当社は新人育成の風土が醸成されておらず、採用は即戦力となる中途採用が多い時代がありました。しかし人口が減少するなかで、次世代の人材を育成することは企業課題の解決につながります。2022年度に初めて新入社員の教育スケジュールを運用し、2ヶ月にわたる研修実施に踏み切りました。すべての部署の業務を知ることで企業の全体像がつかめ「会社にとって、自分の仕事がどんな役割を果たしているのか理解できた」「どんな仕事をしている会社なのか家族や友人に伝えられる」といった声がありました。併せてエルダー制度を導入したことで若手の離職率も低下しています。2020年からはインターンシップも受け入れ、5日間のプログラムで企業の全体像を伝えています。この取り組みが、就職活動中の学生にとって、キャリア形成のファーストステッププログラムと位置づけ、将来への土台をつくる機会になればと思っています。
アップグレードリサイクルを積極的に行っていらっしゃいますね。
~独自技術で、アップグレードリサイクル材料を提供~
目標3は「高品位なリサイクル材をつくり、資源循環を促進する」です。アルミニウムスクラップのアップグレードリサイクルの拡大を図っています。当社でも以前はアルミニウムを二次合金にしてカスケードリサイクルしてきました。しかしリサイクル工程を高度化したLIBSソーターの開発により、アルミ合金系列別に個体選別ができるようになったことで、製品から製品への水平リサイクルが可能になりました。『新幹線』から『新幹線』へのアルミ水平リサイクルは、「東海旅客鉄道株式会社」「日本車輛製造株式会社」「株式会社日立製作所」「三協立山株式会社」との共同で実現したもので、安全性が重視される高速鉄道事業の運転車両に採用されたのは世界初です。今後は太陽光パネルのリサイクル拡大が見込まれるため、アップグレードリサイクルに向けた準備を進めています。
今後への意気込みを聞かせてください。
~サスティナビリティへの貢献が、新たな事業機会を生む~
世界的にサーキュラーエコノミーの標準化が進むなか、高付加価値な再生材料を提供することが、当社に新たな価値を生んでいます。近年は、製品のトレーサビリティーへの関心が一層高まってきました。私たちは社会の課題解決やサスティナビリティへの貢献が事業機会を生むものと考えて、最適な処理技術を確立するなど、社会の要望に応えられるよう成長を遂げて行きます。
室崎 早紀子